ワイヤーアクセサリーを作ってみよう!と思って工具を買いに行ったら、ほとんど同じ形なのに名前が違う工具がたくさんあって困った!という経験、ありませんか?
私は特にこの工具で混乱して、結局何も買わずに帰ったことがあります。👇
これと同じにしか見えない物が"ラジオペンチ"だったり、"リードペンチ"だったり、"エッチングベンダー"だったり、はたまた"チェーンノーズプライヤー"だったり…
製品名が違うだけで同じ物でしょ、と思う人もいるかもしれませんが、これらの工具にはそれぞれの用途があり、それに合わせた特徴があるんです。
今回はこれら4つの工具の違いについて解説します。最後におすすめのメーカー製工具と先端の太さを表にまとめたので、工具を選ぶ時の参考にしてください。
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ラジオペンチ
ラジオペンチは昭和中期のラジオ全盛期に電気工作用として誕生した工具です。
それまでに存在した普通のペンチ(電工ペンチ)は、大きな電気機器の修理・組み立てのために作られたので、全体が大きく無骨で、細かい作業には向かないものでした。主に架線工事に使われていたことから、英語だと Lineman's Pliers (架線工事士のペンチ) と呼ばれています。(開発したのはなんと19世紀のクラインツール社!電報が実用化されて架線工事が必要になったそうです。)

そこで、ラジオなどの小さな機械内部で細い電線や小さな機械部品を掴みやすくするため、先端を細長くしたのがラジオペンチです。
これが👆JIS規格準拠の普通のラジオペンチです。電工ペンチと同様にカッターと滑り止めのギザギザした溝(以下:溝)があります。
この溝加工は掴んだものが滑りにくくて便利なんですが、ジュエリー用の柔らかいワイヤーには深いひっかき傷をつけてしまいます。
このような普通のラジオペンチより先端が細く、カッターと溝が無い精密作業用のラジオペンチも販売されています。こちらの方がアクセサリー製作向きです。
精密作業用でもカッター付きの製品がありますが、カッターは無い方がいいです。
カッター付きラジオペンチは、まずカッターの部分を作ってから、上下の顎の先端同士がくっつくように曲げるという作り方をします。そのため、製品にもよりますが、顎の接地範囲が狭く、細いワイヤーは掴みにくいことがあります。
あと制作中の作品をしっかり固定しようとして、うっかりカッター部分で挟んでしまう、ということも起こりえます。カッター付きはやめておいた方が無難です。
リードペンチ
リードペンチも電気工作用の工具ですが、ラジオペンチよりももっと細かい作業用に作られています。
リードペンチはリード線を直角に曲げるためにくわえ部が四角い形をしていて、小さな部品を傷つけずに掴むため滑り止めの溝がありません。(リード[lead]とは、電子回路上の各部品に電気を通すための電線や電子部品のこと)
時計や医療機器のような精密機械の調整・組み立てなどにも使われる工具です。
先端が細いタイプと幅広のタイプがあって、先細タイプはくわえ部が四角いということ以外ラジオペンチとほとんど同じに見えます。
ですが、リードペンチは狭い場所に部品を差し込みやすいようにくわえ部が薄く作られているものが多く、割と華奢です。
細かい作業がしやすくアクセサリー制作にも便利な工具ですが、これで太いワイヤーを曲げようとすると破損する可能性大なので気をつけましょう。
エッチングベンダー
エッチングとは腐食性薬品を使った表面加工の技法のことです。版画やガラス工芸などに使われているのを見たことがある人もいるのでは無いでしょうか。(エッチングの"etch"は「酸などで腐食させる」という意味)
この技法を使うと金属板を非常に細密に切り抜くことができるため、模型の細かいパーツやアクセサリーなどもこの技法で作られていたりします。エッチングベンダーは主に模型用エッチングパーツを正確に折り曲げるために使われている工具です。
つまり、エッチングベンダーは他のペンチ類と違って板状の物を扱いやすい形をしています。
具体的にどう違うかというと、他のペンチ類は口を閉じるとくわえ部の先端だけが接触してそれ以外は少しだけ隙間が空くのに対し、エッチングベンダーは全体がくっついてほぼ隙間がありません。(まとめのところにあるイラストを見て下さい)
そのため、他のペンチ類はてこの原理で先端部分に力が加えやすく、小さい物や細い物をしっかり掴めるのに対し、エッチングベンダーはくわえ部全体で薄いシート状の物を掴みやすいようになっています。
私はエッチングベンダーを使ったことがないですが、ワイヤーアクセサリー製作は工具の先端でワイヤーや小さなビーズを摘まむことが多いので、エッチングベンダーよりはラジオペンチなどの方が使いやすいんじゃないかと思います。(でもそこまで大きな使用感の差はないかも?)
チェーンノーズプライヤー
チェーンノーズプライヤーは先端が非常に細く繊細な作業がしやすい工具で、工芸や手芸、電子機器組み立てなどに使われます。
ラジオペンチの所で書いた、カッターと溝が無い精密作業用のラジオペンチというのがほぼこれです。(と私は思っています。おそらく、チェーンノーズプライヤーという名前ではなじみが無くて売れないから、ラジオペンチという名前で売っているのでは?外国ではケイバのラジペン[HLCD14]がチェーンノーズとして売っているし。)
リードペンチも先端が細くて精密な作業がしやすい工具ですが、リードペンチは正確に加工するための、チェーンノーズプライヤーは美しく仕上げるための工具です。
リードペンチは溝なしではあるものの、くわえ部表面は少しザラついていることがあります。チェーンノーズプライヤーは滑らかな面処理が施されていて、掴んだ物を傷つけません。
個人的に一番気になっていたのは、なぜチェーンノーズ(鎖鼻)なんていう名前なのか、だったんですが、チェーンノーズに関する情報は用途や形の説明しか見つからなくて全く分かりませんでした。しかたなくAIに聞いてみたところ、
- チェーンのように細長いから > Copilot, ChatGPT
- チェーンの開閉などの細かい作業に適しているから > ChatGPT
- 口を閉じて先端側から見ると、チェーンのように楕円形だから > Gemini
…とのことです。
電工ペンチほどではないものの、これも昔から使われている工具で、形や用途から何となく"チェーンノーズ"と呼ばれてきたみたいですね。(AIによると)
まとめ
口を閉じたところを横から見た形、上から見た形、先端から見た形のイラストを描きました。これに当てはまらない製品もありますが、大体こんな物だという感じで見て下さい。
ラジオペンチ(JIS規格)
- くわえ部溝あり。ワイヤーアクセサリーに使うような柔らかいワイヤーは傷がつきやすい。
- カッターがあるため隙間大。薄い物、細い物をつかむのは苦手。
- くわえ部は分厚くて頑丈。様々な作業に使える。
- 先端側からみた形状は半円形でけっこう太い。小さいものでも幅2mmくらいはある。
リードペンチ
- くわえ部溝なし。つかんだものを傷つけにくい。
- 隙間大。てこの原理で先端に力を加えやすい。
- 先端は厚さ1mm程度。狭い場所に差し込むことができる。
- 先端側から見た形状はビシッと四角い。直角に曲げるのに便利。
エッチングベンダー
- くわえ部溝なし。つかんだものを傷つけにくい。
- 隙間小。くわえ部全体でシート状のものをつかみやすい。
- シート状のものを折り曲げるための道具なので側面がまっすぐ。
- 先端の形はあまり問題にはされない。半円とか台形とか三角とかいろいろ。
チェーンノーズプライヤー
- くわえ部溝なしで滑らかな面処理。つかんだものを傷つけにくい。
- 隙間大。てこの原理で先端に力を加えやすい。
- 先端は1mm程度で細かい作業がしやすい。それ以外は太めなので頑丈。
- 先端側からみた形状は半円形。
おすすめのメーカー製工具と先端の太さ
メーカーのホームページやカタログを見て、製品名と型番と先端の厚さ・幅を表にまとめました。今回はチェーンノーズプライヤーに関する記事なんですが、ついでにラウンドノーズとフラットノーズも調べておきました。先端の厚さ・幅は記載が無かった物に関しては空欄になっています。
厚さと幅は念入りに確認したつもりですが、絶対に間違いが無いとは言い切れないので、重要な場合はご自身でしっかり確認をしてください。
メーカーの並び順には特に意味はありません。ツノダから五十嵐プライヤーまでは日本製、ビーズスミスはパキスタン製、リンドストロームはドイツ製です。
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チェーンノーズプライヤー(ラジオペンチ)
チェーンノーズプライヤー以外の物も含まれていますが、これらはチェーンノーズプライヤーと同じように使えると私が思っている製品です。この記事で解説したような特徴があることを念頭に置いた上で選んで下さい。
メーカー | 製品名 | 型番 | 厚さ(mm) | 幅(mm) |
---|---|---|---|---|
ツノダ | 先細リードペンチ | TM-08 | 2.0 | 1.0 |
極細リードペンチ | TM-13 | 1.4 | 1.0 | |
マルト長谷川 (KEIBA) |
ラジオペンチ・溝無し | HL-D14 | 1.0 | 1.0 |
HLC-D14 | ||||
マイクロヤットコ(先細タイプ) | MY-636 | 1.0 | ||
3ピークス | チェーンノーズプライヤー | SM-09 | 1.5 | 0.8 |
TOP工業 | 極細リードペンチ | NL3-130 | 1.4 | 1.0 |
HOZAN | ミニチュアラジオペンチ | P-35 | 1.1 | 0.6 |
五十嵐プライヤー | ニードルペンチ | NP-115 | ||
ビーズスミス (Beadsmith) |
チェーンノーズプライヤー | PL650 | ||
ER910 | ||||
PL139 | ||||
PL310 | ||||
リンドストローム (Lindstrom) |
スニップノーズプライヤー (チェーンノーズプライヤー) |
7890 | 1.2 | 0.8 |
RX7890 |
ラウンドノーズプライヤー
メーカー | 製品名 | 型番 | 厚さ(mm) | 幅(mm) |
---|---|---|---|---|
ツノダ | ラウンドノーズプライヤー | TM-09 | 1.8 | 0.9 |
丸ペンチ (ラウンドノーズプライヤー) 旧名ミニコーンプライヤー |
MCR-145 | 3.0 | 1.5 | |
マルト長谷川 (KEIBA) |
丸ペンチ・先細タイプ | HR-D14 | 1.6 | 0.8 |
丸ペンチ・先細タイプ 2com.ハンドル | HRC-D14 | |||
丸ペンチ・先細ショートタイプ | HRC-D24 | |||
丸ペンチ | HR-D04 | 3.0 | 1.5 | |
丸ペンチ 2com.ハンドル | HRC-D04 | |||
3ピークス | ラウンドノーズプライヤー | SM-08 | 1.6 | 0.8 |
RNP-115 | ||||
TOP工業 | ラウンドノーズプライヤ | RN-100 | 1.6 | 0.8 |
HOZAN | ミニチュア丸ペンチ | P-39 | 2.4 | 1.2 |
五十嵐プライヤー | プロラウンドペンチ | PRP-ism | ||
ビーズスミス (Beadsmith) |
ラウンドノーズプライヤー | PL654 | ||
ER914 | ||||
PL314 | ||||
リンドストローム (Lindstrom) |
ラウンドノーズプライヤー | 7590 | 1.4 | 0.7 |
RX 7590 |
フラットノーズプライヤー
メーカー | 製品名 | 型番 | 厚さ(mm) | 幅(mm) |
---|---|---|---|---|
ツノダ | 平口リードペンチ | TM-07 | 2.0 | 3.5 |
リードペンチ
旧名ミニフラットノーズプライヤー |
FNP-115 | |||
マルト長谷川 (KEIBA) |
平口リードペンチ | HF-D04 | 1.6 | 3.5 |
平口リードペンチ 2com.ハンドル | HFC-D04 | |||
リードペンチ | F-606 | 1.6 | 4.5 | |
リードペンチ(先細タイプ) | F-615 | 1.0 | 4.5 | |
マイクロヤットコ(平口タイプ) | MY-646 | 1.6 | 3.0 | |
3ピークス | ロングステンレスリードペンチ | LS-05 | 1.0 | 4.0 |
ショートリードペンチ | SP-36 | 2.0 | 3.0 | |
SP-26 | ||||
TOP工業 | フラットノーズプライヤ | FN-100 | 1.2 | 3.0 |
HOZAN | ミニチュアリードペンチ | P-34 | 0.9 | 4.8 |
リードペンチ | P-16 | 2.0 | 4.0 | |
五十嵐プライヤー | フラットペンチ | FF-115 | ||
ビーズスミス (Beadsmith) |
フラットノーズプライヤー | PL616 | ||
ER916 | ||||
PL135 | ||||
リンドストローム (Lindstrom) |
フラットノーズプライヤー | 7490 | 1.2 | 3.2 |
RX7490 |
画像の著作権
- ©1:Photo by Sarah Pflugfrom Burst
- ©2: 00268-003A-Beadalon-Chain-Nose-Pliers
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