ワイヤージュエリー・クラフトに使われるワイヤーに関して、前後編に分けて解説します。
前編は金属の種類編、後編はワイヤーの形、硬さ、ゲージ編です。
初心者から上級者向けまであるので、自分にあった素材を選んで下さい。
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銅のらくまくワイヤーと、ブラスのプラクティス素材のみ、楽天ではなくアイラブスマートへのリンクになっています。
銅(コパー、カッパ)
初心者から中級者におすすめなのは断然、銅です。手に入りやすいし、柔らかくて加工しやすいし、お財布にも優しいので実験的な作品に気兼ねなく挑戦することができます。
また、銅はニッケルを含む他の金属よりは金属アレルギーを起こしにくい素材でもあります。
アーティスティックワイヤー
ワイヤーアート用のワイヤーを検索してまず見つかるのはこれではないでしょうか。ハンドメイドアクセサリー資材を専門に扱っているBeadalonという会社の製品です。
ワイヤーアクセサリー制作によく使われるのはスタンダードカラーズとシルバープレーテッドカラーズというシリーズです。 銅の芯材にエナメルのカラーコーティングと耐変色コーティングが施されていて、色数は2つのシリーズを合わせると57色もあります。
(スタンダードカラーズの中には銅ではないもの、コーティングが無いものもあります)
スタンダードカラーズは光沢の少ないしっかりした色合いのものが多く、シルバープレーテッドカラーズは銀メッキの上に色を付けてあるので銀の輝きがあります。
詳しくは、英語ですがメーカーサイトの説明を読むか、PDFカタログを見てください。21ページにスタンダードカラーズ、22ページにシルバープレーテッドカラーズがあります。(カタログの上端に書かれているページ番号だと、40~43ページ)
日本でアーティスティックワイヤーを全色全ゲージ取り扱っているお店はなかなか見当たりませんが、NOISEというお店はBeadalon製品のアジア地区輸入総代理店が運営しているお店だそうで、割といつも揃ってます。
らくまくワイヤー
アイラブスマートというお店の自社製品で、いわゆる和製アーティスティックワイヤーです。
銅の上にシルバーメッキ、さらにエナメルとポリウレタン加工がされたワイヤーで、アーティスティックワイヤーのシルバープレーテッドカラーズとほぼ同じなのに、アーティスティックワイヤーよりずっと安くておすすめです。
銅以外のワイヤーもありますが、カラーカッパー線は全10色となっています。
裸銅線
電気工作や園芸などでおなじみの銅線。 私が使うのはもっぱらこれです。
あまり人気がありませんが、ピンクゴールドにちょっと似ていてきれいだと思いませんか?
変色することを欠点だと言う人もいますが、定期的に磨いてアンティークのようにエイジングを楽しむことができます。 また、はんだ付けやハンマーを使った加工、薬品を使ったパティーナ仕上げなど、コーティングのあるワイヤーでは決してできないことが可能です。
金、銀
金や銀のワイヤーがあるなんて、ご存じでしたか?
私はワイヤーワークをやるようになって初めて知りました。
銅ワイヤーで熟練したら、こういう高価なワイヤーに移行する作家さんが多いです。
金
金は硬さや色味の調整のために銀、銅、亜鉛などの別の金属が混ぜられていて、その割合は24分率で表す数字に、カラット(純度を表す単位)のKをつけて表されます。
純金は24/24なので24K。18/24(金75%)なら18K、10/24(金42%)で10Kです。
アクセサリーに使われる金合金はカラーゴールドと呼ばれ、代表的な物としてはイエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドがあります。
- イエローゴールド:純金はオレンジ色がかっているので、そこに銀と銅を混ぜて、私たちが「金色」と感じる明るい色合いに調整したもの。比較的変色しにくい。
- ピンクゴールド:銅の比率を多くして温かみのあるピンクがかった色合いにしたもの。混ぜられた金属の8割が銅なので変色しやすい。
- ホワイトゴールド:パラジウムやニッケル、亜鉛などの白色金属を混ぜてシルバーに似た白い輝きを持たせたもの。プラチナに似ているけどもっと安価。
日本ではイエローゴールド以外のワイヤーはなかなか見ません。欲しかったら個人輸入するしかなさそうです。
銀
純銀はアルミや金と同じくらいの硬度しかない、非常に柔らかい金属です。それで、金と同じように銅やパラジウムなどを混ぜて硬さの調整がされています。
純度は金とは違って千分率(‰:パーミル)で表されます。
銀の含有量が999‰以上、つまり純銀ならファインシルバー、銀の含有量925‰ならスターリングシルバー、900‰ならコインシルバーです。
ファインシルバーは爪で傷が付くくらいに柔らかいので、ジュエリーには美しさと耐久性を兼ね備えたスターリングシルバーがよく使われます。
フィルド、プレーテッド
金や銀そのものをワイヤーに加工した物だけでなく、ゴールドフィルド(gf)、シルバーフィルド(sf)や、ゴールドプレーテッド(gp)、シルバープレーテッド(sp)と呼ばれるものもあります。
フィルドとは芯となる金属の表面に金・銀を圧着したものです。芯となる金属を含めた総重量の5%以上が金・銀であるものがフィルドと呼ばれます。
プレーテッドとはメッキのことです。らくまくワイヤーのカラーカッパー線と、アーティスティックワイヤーのシルバープレーテッドカラーズというシリーズは、銅を芯材としたシルバープレーテッドワイヤーにエナメルコーティングをしたものです。
ブラス(真鍮)
銅に亜鉛などを含ませた金色の銅合金です。製造コストが低いので、昔から金の代用として使われてきました。含ませた金属の割合によって様々な名前があり、それぞれの特徴と用途があります。
アクセサリーに使われるのは銅70%のイエローブラス、銅85%のゴールドブラス、銅90%のレッドブラスです。銅が多いほど赤みが増し、ゴールドブラスが18Kの金に、レッドブラスが純金に近い色合いになります。これらはアクセサリーの他、金管楽器や仏具などにも用いられています。
5円玉や一般的な真鍮ワイヤーは銅65%ほどです。亜鉛の割合が増えるほどにワイヤーが硬くなるので、普通の真鍮ワイヤーでアクセサリーを作るのは、あまり美しくない上にちょっと難易度も高くなるのでお勧めしません。
アクセサリー用ブラスワイヤーはあまり見かけることがありませんが、アクセサリー用資材の専門店ならそこそこ販売されています。アーティスティックワイヤーのノンターニッシュブラス(Tarnish
Resistant Brass)とイエローブラス(Bare Yellow
Bras)なら近所の手芸屋さんにもあるかもしれません。
アイラブスマートのブラスワイヤーはゴールドブラスです。
ステンレス
ステンレスは"stainless
steel"の略で、そのまま日本語にするなら「さびない鉄」です。
銀色で美しいのに銀より安価で、耐蝕性に優れ、加工しやすい上にアレルギーを起こしにくいステンレスは、アクセサリー素材としてもおなじみですね。
鉄にクロムなど別の金属を含ませたステンレス合金は、含まれている金属によっていくつかの種類があります。アレルギーを起こしやすい金属の含有が少ないのは、SUS304とSUS316Lです。
SUS304はキッチン用品にもよく使われている身近なステンレスで、らくまくワイヤーやアーティスティックワイヤーのステンレス線もSUS304です。
SUS316Lはさらにアレルギーを起こしにくく、医療にも使われるためサージカル(手術用)ステンレスとも呼ばれます。値段はSUS304より少し高めです。
私はステンレスワイヤーを使ったことがないのですが、販売サイトのレビューによると、商品説明にどんなにやわらかいと書いてあってもやっぱり銅に比べれば硬いようなので、初心者向けではありません。
カラーワイヤー
オブジェやウォールアートを作って楽しんだり、カゴや写真立てなど身の回りのちょっとした雑貨を作ったりするのに使われるワイヤーです。(もちろん、アクセサリーを作る人もいます)
素材は主にアルミか鉄です。
アルミニウム
軽くて柔らかく、変色しにくいワイヤー。値段が安いので気軽に挑戦できますが、工具による傷が付きやすく、鋭角に曲げるとそこでパックリ割れてしまうことがあり、慣れが必要な素材でもあります。脆いので1.0mm未満の細いゲージはあまり売っていません。
とはいえ、銀色の生地に着色されたワイヤーはとても美しく、創作意欲がかき立てられるワイヤーです。
銅のところで紹介したらくまくワイヤーとアーティスティックワイヤーにはアルミ線もあります。
日本で売っているアーティスティックワイヤーのアルミ線は日本製で、Beadalonの製品ではありません。本家は色数が少なく太さは1種類しかありませんが、日本では13色あり、太さも7種あります。
メッキではなくアルマイト処理による色づけをしているので(よく分からないけど💧)、ハンマーで軽く叩く程度の加工には耐えられるらしいです。
アルミのアーティスティックワイヤーも、銅と同じくNOISEならいつも全色揃っています。
塩ビ線(鉄)
ポリ塩化ビニール(PVC)で被膜されたスチール線。皮膜のおかげで肌当たりが柔らかく雨にも強いので、屋外で園芸や何かの一時的な補修によく使われていますね。
塩ビ皮膜は意外と破れやすいので工具を使うときは気をつけなければなりません。
ホームセンターで見かけるのは白・黒・グレー・と赤・青・緑などの原色系しかありませんが、日本化線の自遊自在と頑固自在はワイヤークラフトに全振りしたワイヤーで、色数がたくさんあります。
自遊自在はレタス、キャンディ、トマトなど、ポップな色合いのシリーズです。キャップやジョイントなどの副資材があり、キャップを使えばワイヤーの端の処理に困ることはないし、ジョイントを使えばプライヤーを使わなくても簡単にワイヤー同士をつなぐことができます。子供でも安全に楽しむことができるワイヤーです。
頑固自在は落ち着いた色合いのシリーズで、自遊自在よりすこし張りのあるワイヤーです。大きい物や自立させたい物を作る場合はこちらを使った方が良さそうです。自遊自在は柔らかすぎて形を保つことができません。
日本化線のホームページに無料のレシピがあります。
他にもあるけれど…
と言うわけでワイヤーアートに使われる様々なワイヤーについてご紹介しました。
他にも、モールタイやビニールタイ(パンやお菓子の袋を閉じるアレ)などをクラフトに使っている人もいますが、ワイヤーアートの範疇からは少しずれるかなと思うので、この辺にしておきます。
後編ではワイヤーの断面の形状、硬さの種類、ゲージについて解説します。























